《ピアノ指導者検定指導実技と〈良い指導者〉》

2015.02.16

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今日は巣鴨のPTNA東音ホールで行われた指導者検定の審査をしました。
指導者検定は初級・中級・上級と三つの級に分かれていて、合格するには各級ごとに『指導実技』『演奏実技』『筆記試験』『レポート』の4項目をクリアしなくてはなりません。
今日はその中の指導実技検定が行われました。受検する方はあらかじめ与えられた課題曲をモデル生徒(今日は小中学生でした)にレッスンします。その様子を三人の審査員が採点して合否を決めます。演奏を評価して貰う機会はコンクールなど色々ありますが、指導法を評価される場はほとんど無いので、自分の指導法を見直したいと思う真面目な指導者の方々が受検されます。
日本ではピアノ指導者になるのに資格は不要。「ピアノを教えます」と言って生徒が来れば誰でもピアノの先生です。ですから、音大を出ていなくてもOK.。最近は私が務める昭和音大でも指導者になる為のノウハウを学ぶ授業がありますが、音大を出たからと言って〈良い指導者〉になれるとも限りません。何となく教え始めてみたものの、これで良いのだろうかと悩む指導者も多いのです。
今日も審査しながら〈良い指導者〉とは何だろうと考えていました。難しいです。病気を治すという分り易い使命がある医者という職業でさえ、〈実力はあるがオンボロ病院の気難しい先生〉より〈近代的できれいな病院の優しい先生〉の方が人気があるそうです。最近のピアノ指導者も〈色々なコンクールに多くの生徒を入賞させている先生〉や〈バラエティーに富んだ発表会を行うピアノ教室〉または〈ネットでのブログが人気の先生〉が人気があるようです。でも本当にそれが〈良い指導者〉なのかしら・・・。音楽の本質の指導からドンドン離れていくようで淋しい気がします。
審査後に私達3人の審査員が講評を行い、受検された方達とのディスカッションもしました。その場でPTNAの担当の河上紗安香さんから「レッスンで最も大切だと思われるものを3つ挙げるとしたら何ですか?」と私達審査員に質問が投げかけられました。
私は「〈ピアノ〉の前に先ず〈音楽〉がある。ピアノという便利で優れた楽器を使って〈音楽〉をどう表現していくかを指導すること」「指導者の知識を一方的に押し付けるのではなく、その生徒に今何が必要かを判断して優先順位をつけ、一度に欲張らずに指導すること」「指導した内容を生徒が理解し納得しているかを確認すること」の3つを挙げました。
これは今日受検された方達へのMessageというよりも、私自身が心掛けていることです。指導者検定の審査をやらせて戴く度に抱く違和感「私ごときが指導法に優劣を付けて良いのだろうか」を今回も感じました。私とは明らかに違う価値観を、受検された方達だけでなく、コンクールの審査員同士からも感じることがよくあります。だからと言って、どちらが〈良い指導者〉なのかは決められません。〈色々なコンクールに多くの生徒を入賞させている先生〉も〈バラエティーに富んだ発表会を行うピアノ教室〉も〈ネットでのブログが楽しい先生〉も求める人から見たらそれぞれが〈良い指導者〉なのです。
自分の音楽感を貫きながら、自分の求める〈良い指導者〉像に試行錯誤しながら近づいていく。結局それしか無いなと思いました。
写真は「終了後に審査員の金子勝子先生、西畑久美子先生と遅いランチ」